トリコモナスとは

トリコモナスイメージ

トリコモナス原虫(0.01mm~0.025mmくらいの大きさです)に感染することで起こる性感染症がトリコモナスです。男性では尿道や前立腺に、女性では膣や子宮頚管、下部尿路が主な感染部位となりますが、男性では症状が現れないことが多く、女性では膣トリコモナス症を引き起こし、膣炎を発症させます。女性では放置しておくと、不妊の原因となる場合があります。また妊娠中に感染すると早産のリスクが高まります。

性行為の他にもタオルやお風呂などでも感染することもあり、性行為が未経験の女性や幼児でも感染する場合があります。またパートナーが無症状であることもあり、他の性感染症と比べて、中高年者まで幅広い年齢層の患者さんがいます。膣炎の症状が出た場合、パートナーも同時に治療を行うことを検討すべきです。しかし男性の尿道炎の起炎菌としてトリコモナスは頻度的にまれで、女性に比して男性のトリコモナス感染症は少ないのは現実です。

トリコモナスの相談で実は一番多いのが「相手の女性がトリコモナスだった」との相談です。
しかし男性への感染率が高いわけではないので、実際にしっかり検査、顕微鏡検査、培養検査など行って、何より精密なトリコモナスのPCR検査をぜひとも推奨します。ご相談ください。

トリコモナスの症状

トリコモナスに感染しても無症状であることも多く、女性の膣トリコモナス症でも、約10~20%は感染していても症状が現れない無症候性感染と言われています。発症がみられる場合は、感染から10日前後の潜伏期間を経て、膣から泡のようなおりものが出てくるのが特徴です。おりものは悪臭伴うことがあり、また黄緑色になる場合もあります。

この他、腟壁の粘膜が通常より赤くなったり、腟に点状や斑状の出血がみられたり、陰部にかゆみが出たり、性交時痛や排尿時痛があったりします。排尿時痛は男性でも尿道炎や前立腺炎を起こした場合に見られることがあります。

トリコモナスの検査

トリコモナスは感染後すぐに検査を受けることができます。一般的には膣分筒液を採取し、顕微鏡を用いてトリコモナス原虫を確認します。トリコモナス原虫は洋ナシ形でべん毛を有しており、回転するように活動しますが、その様子が確認できればトリコモナスと診断できます。

明らかにトリコモナスの症状を呈しながら、顕微鏡では確認できない場合、原虫が少数で見逃されていることもありますので、培地を用いた培養検査を行う場合もあります。しかし培養検査は特殊培地で一般細菌とは異なる検査準備が必要です。なお、トリコモナスは感染が粘膜で留まり、組織侵入性がありませんので、血液検査による診断はできません。

トリコモナスの治療

トリコモナスの治療としては、抗トリコモナス薬の内服や膣剤を用います。抗トリコモナス薬としては5-ニトロイミダゾール系の薬剤で、主に男女ともメトロニダゾールを使用します。投薬期間は10日間ほどです。治りにくかったり、再発したりして追加治療が必要な場合は、1週間以上間をあけて、再び内服薬を用いるか、膣剤を用いる場合もあります。メトロニダゾールによる治療成功率は9割以上とされています。

他の性感染症と同様に、パートナーとの「ピンポン感染」を防ぐため、時と場合によりますが、パートナーとの同時治療も検討しましょう。
しかし、この原虫の薬剤はニトロ基という化学構造があり発がん性が少し懸念される薬剤でもありますので、いたずらの濫用は推奨されません。治療の場合は適切に必要時に使用することをお勧めします。