淋病とは

淋病イメージ

淋病とは、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)という細菌に感染することで引き起こされる性感染症の一つです。感染者との性行為(オーラルセックス・アナルセックスを含む)により、男性の尿道や女性の子宮頚管、また咽頭の粘膜などに感染し、炎症等を引き起こします。

年間、数10万人程度が罹患するとされており、20~30代の男性に多いと言われていますが、これは女性の場合、自覚症状が少ないことで気づかれていないことも多いため、ということも考えられています。現在では10~20代では男女差が少なくなっているという報告もあり、若い女性にも拡大している病気です。

淋病の症状

淋病の症状は、男女によって現れる部位や現れ方が異なる場合が多くなっています。男性の場合は淋菌性尿道炎が、女性の場合は淋菌性子宮頚管炎が多く見られます。この他には淋菌性咽頭炎や淋菌性結膜炎などもあります。

淋菌性尿道炎

淋菌によって引き起こされる尿道の炎症で、男性に多くみられるものです。性行為による感染から1週間ほどで症状が現れます。症状としては、排尿の際の強い痛みや灼熱感があります。同時に大量の膿を尿道口から排出するのも、淋菌性尿道炎の特徴です。また尿道のかゆみや不快感(残尿感)、副睾丸の腫れ、発熱などの症状も現れます。ただし、症状は人によって様々で、症状がほとんど現れない場合もあります。

症状が強い場合は、亀頭部が赤く腫れたり、淋菌が尿道から精管に至ってしまい、精巣上体炎を発症したりします。精巣上体炎が進行してしまうと、精子の通り道が閉鎖し、男性不妊につながる場合があります。

淋菌性子宮頸管炎

淋菌によって引き起こされる子宮頚管の炎症で、女性に見られるものです。おりものが増えたり、色が変わったり、不正出血がみられたり、性交時痛があったりしますが、男性のように特徴的な症状が出ないため、感染に気づかず、疾患が放置されたり、性行為による感染拡大につながってしまったりすることも多くなっています。

進行すると骨盤内部に炎症が広がり、子宮から卵管や卵巣へと感染し、卵管炎や卵巣炎、子宮内膜炎、骨盤腹膜炎を発症する場合があります。すると発熱や腹痛を引き起こすことがあります。これらは不妊症や子宮外妊娠の原因となる場合がありますし、出産時に子供に感染し、新生児結膜炎による失明のリスクも出てきます。

淋菌性咽頭炎

淋菌によって引き起こされる喉の炎症のことで、オーラルセックスなどによって感染します。無症状のことも多いですが、尿道に淋菌感染症がある場合30~40%程度に咽頭感染も同時にあるとされています。症状としては、喉の痛み、声のかすれ、扁桃腺の腫れ、首のリンパ節の腫れ、喉の奥に白い膜(白苔)が張ったようになる、といったものがありますが、たまに扁桃腺炎のような高熱の症例もありますし、なんとなく喉がいがらっぽいのが続くとか、咳が多いなどの場合もあります。前述したように前述女性の淋菌性子宮頚管炎と同じく無症状であることが多く、見逃されることが多く、感染拡大の危険性も高まってしまい要注意です。淋菌性尿道炎の場合、咽頭検査も是非受けてください。

淋病の検査

問診を行い、また陰部やのどの状態をみて、膿や炎症の有無を確認します。さらに男性の場合(尿道炎)は尿検査による、女性の場合(子宮頚管炎)は膣分泌液を綿棒などで拭い、検体を採取して検査を行います。また咽頭を検査する場合は、生理食塩水でうがいをし、感染の有無を検査します。一応当院ではPCR検査という精密な検査を採用しています。抗原検査の場合簡便ですが偽陰性もあって正確ではないので、数日時間はかかりますがより精密確実なPCR検査をしています。

淋病の潜伏期間は2日~1週間程度とされていますが、感染直後でも検査を行うことができます。感染の不安がある場合は、早めにご受診ください。また、淋病感染が疑われる場合は、クラミジアや梅毒、HIVなど、他の性感染症に罹患していることも多いため、同時に検査を行うこともあります。

淋病感染が発見された場合は、パートナーも感染していることが多いため、パートナーも同時に検査を受けることが大切です。パートナーが感染している場合、淋病が治っても、再感染してしまう可能性があります。

淋病の治療

淋病の治療には抗菌薬による治療が有効です。ただし、近年では耐性菌と呼ばれる抗菌薬が効かない淋菌が増えており、内服薬での効果も低くなっています。現時点では、セフトリアキソンという抗菌薬の点滴による投与が最も有効と思われます。

通常、1回の投与で終了します。淋菌尿道炎のセフトリアキソンの治癒率は現時点96~98%と高値ですが、咽頭淋菌は臨床現場ではやや除菌されにくい傾向があります。男性で精巣上体炎を発症していたり、女性で骨盤内にまで炎症が及んだりしている場合は、数回の点滴が必要な場合もあります。抗菌薬による治療は、投与後に再検査を行って効果の度合い調べ、効果が見られなければ抗菌薬の種類を変えることも検討します。

淋病は、治療によって症状がみられなくなった場合でも、淋菌が残っていることがあるため、治療終了後、1週間程度後の検査を行い、淋菌への感染が完全に無くなっていることを確認する必要があります。