尖圭コンジローマとは
尖圭コンジローマは性感染症のひとつで、性器疣贅とも呼ばれるもので、ヒトパロマーウイルス(HPV)の感染によって引き起こされます。主に陰部を中心にイボのような病変が現れるもので、主に性行為によって感染します。20代の男女に多く見られる性感染症の一つですが、中にはがん化するものもありますので注意が必要です。女性の子宮頸がんとの関連性も指摘されています。
HPVには遺伝子のタイプから100種類以上ありますが、尖圭コンジローマは特に6型と11型が原因の9割を占めています。6型および11型は性行為で感染し、陰部や会員部、肛門周囲に尖圭コンジローマを引き起こします。他のHPVのタイプでは、16型や18型である場合、子宮頸部や肛門、直腸に感染します。これによって子宮頸がん、膣がん、肛門がん、直腸がんのリスクが高まります。またオーラルセックスによって感染し、口腔がんのリスクもありますので、しっかりと治療する必要があります。
尖圭コンジローマの症状
尖圭コンジローマは、男性では陰茎や亀頭、尿道口、包皮の内側、陰嚢の皮膚などに、女性では大陰唇や小陰唇、膣などの性器の各所に、2mm程度のものから、大きくなった場合は、ニワトリのトサカ状とかカリフラワー状と表現されるイボが現れます。肛門周辺にも現れる場合があります。
初期には自覚症状がないため、イボが本人から見えにくい位置にあると、発見が遅れる場合もあります。イボが徐々に大きくなっていくと、かゆみや痛みを伴うことが多く、女性の場合は外陰部のしこりや、おりものが増えるといった症状がみられる場合もあります。
男性の患者さんで仮性包茎の場合は、特に発生率が高くなっています。これは、慢性的な包皮内部の皮膚の炎症があるため、外部からの感染に対する皮膚のバリア機能が低下して弱まっていると考えられるためです。
尖圭コンジローマの検査
尖圭コンジローマは、潜伏期間が3週間~8カ月程度と長く、症状が現れていないと検査が行えない場合もあります。発症すると、特徴的な形状のイボができることから、視診による診断も有効ですが、中には他の皮膚疾患である場合や、がんの可能性である場合、さらに梅毒の感染でも性器周辺にイボができることから、一見だけでは判断の付きにくいこともあります。当院では感染の可能性に関する問診等も行った上、可能な限り、顕微鏡で詳しく組織を観察する病理学的検査をしっかりと行い、診断しています。
イボの確認にあたっては、女性の場合、拡大鏡のような医療機器で子宮頚管や子宮口の状態を確認したり、肛門周辺の発症がある場合は肛門鏡により直腸の状態を確認したりする検査を行う場合もあります。
また女性の場合HPVの遺伝子検査などは、子宮頸部の擦過テストで施行している婦人科医療機関は多いですが、男性も性器皮膚などで気になる病変がある場合、擦過テストで代用的に、HPVウイルス遺伝子型検査は行うことは可能です(保険適応外)。
尖圭コンジローマの治療
尖圭コンジローマの治療には、大きく外科的治療と、外用薬(塗り薬)による薬物治療の二つがあります。イボの大きさや数、位置、これまでの治療の有無、回数などを検討した上、治療法を選択します。
外科的治療には、メスによる切除や電気焼灼術、凍結療法などがあります。電気焼灼術は電気メスによって、イボを焼き切るものです。また凍結療法は、液体窒素を綿棒に含ませてイボに押し当て、壊死させるものです。ただしこの治療法は再発しやすいため、1~2週間おきに繰り返す必要があります。効果的には電気的な焼灼処置が、尖圭コンジローマの治療としては一番効果があるようです。デメリットは処置の後の皮膚に瘢痕形成が起こる可能性があることなどです。また、何度も処置が必要なケースも多いです。
当院では目立つ病変に関し、局所麻酔を使用しての外科切除、電気焼灼術を行っています。
その際、病理検査の必要性と重要性は当院では非常に重要視しているので、病理検査も併せて行い、診断をさらに確実なものとしていきます。視診のみでは誤診もあります。
尖圭コンジローマを根本的に治療するためには外科的治療が時には必要ですが、薬物治療も並行して行われるようになっています。使用されるのはイミキモドクリームという外用薬で、2007年から使用できるようになり、比較的高い有効性が認められています。2か月の概要で70%程度の症例には大きな効果はあります。逆に言うと30%程度は効果がありません。ただし、粘膜面には使用できないことは重要です。他、塗ったままでの性行為は禁止であるなど、気を付けるべき点があります。皮膚炎の副作用が多く30%程度は中程度以上の皮膚炎になります。皮膚炎の場合概要は停止して適切に対応します。
陰茎部などの尖圭コンジローマは、非常に再発しやすい疾患で、患者さん自身の免疫力も大きく関係してきますが、治療には長期間かかる場合もあります。当院では患者さんとともに、できるだけ迅速に、時には根気よく、適切な診断と治療を行い、苦痛の少ない治療法を考えていきます。
予防について
尖圭コンジローマの原因となるHPVは性行為によって感染するため、コンドームの使用を心がけることや、感染のリスクを高める不特定多数との性交渉を控えることが大切です。また発症しているときはパートナーとの性行為はしないようにし、オーラルセックスものどへの感染リスクがありますので、控えましょう。
また、日本においてはHPV感染の予防のためのワクチンを受けることができます。HPVの16型・18型の感染を予防し、子宮頸がんの予防につなげる2価ワクチン、さらに尖圭コンジローマを引き起こすHPVの6型・11型にも対応した4価ワクチン「ガーダシル」があり、さらに9種類のHPVの感染を予防する9価ワクチン「シルガード」も近年登場しています。
HPVワクチンの積極的推奨
HPVの予防は非常に重要です。当院では子宮頸がんや尖圭コンジローマ、肛門がん、咽頭がんなどの発がん予防の観点からも積極的に、HPVワクチンの接種を推奨しています。現時点、2022年時点、日本の国内、男性への認可ワクチンは4価ワクチン「ガーダシル」です。
※HPVワクチンの接種では、一般的には若年者の推奨とされています。しかし中年層以上の年齢層であっても性行為の活動性などの状況は個人差が大変大きいものがあります。そのような現実的な観点から、当然、感染予防の必要性については個人差もとても大きいものがあります。当院では場合によっては、ある程度の年齢層であっても相談の上、接触的接種の希望者にはHPVワクチンは投与を行っております。通常ほぼ副作用はありません。2022年7月時点では日本国内で男性へ認可されているものはガーダシル4価ワクチンとなっております。随時ご相談ください。9価ワクチンのシルガードについても早期の男性承認を待っている段階です。